後3分14秒。
「本当に一人で大丈夫か」
「はい。大丈夫です。今まで有難うございました、夜神さん」
気遣わしげな表情を隠して敬礼した警官が扉の向こうに消えた後、ゆっくりと傍らに置いた写真に手を伸ばす。
「・・・・・貴方に、無事に会えると良いのだけれど」
呟いた言葉は、我ながら情けないものだった。
後1分52秒。
死後の世界も神の存在も信じた事は無かった。
それ故に信仰する人間の心理を推し量る事は出来なかったが、今初めて。その気持ちが如何なるものかを知った。
天国でも地獄でも良い。
魂の行く先があると良い。
ならばきっと、自分は彼を探すだろう。何時だって先に自分を見つけてくれていた、彼を。
こんな時くらい、自分が先に見つけて驚かせたい。
死神が存在したのだ。死後の世界だって在ってもおかしくない。
そこまで考えてくすりと笑う。
まさか死神に希望を見出す事になろうとは。
余りに皮肉な結果に。しばし一人で笑い続ける。
後45秒。
穏やかな空気が身を包み、次第に目蓋が重くなっていく。
全てを委ねようと瞳を閉じたその時、頭の上にふわりと温かい感触が舞い降りてきた。
『お迎えに上がりました。L』
そして懐かしい、あの声。
『・・・・ああ。駄目じゃないか、ワタリ。私がお前を探しにいく予定だったのに』
『それは申し訳ありません。けれどこれはワタリの役目ですので』
『お前も頑固だな』
『貴方ほどでは』
後18秒。
『・・・・嘘だ。ワタリ、来てくれて嬉しい』
『はい。ワタリはいつでも、Lの傍に』
『ああ。・・・・これからは、一緒だ』
ずっと、一緒だ。
――――ゼロ。